2009年6月27日土曜日

ステイシー・ケント 「市街電車で朝食を」

ステイシー・ケントのアルバムを勧められて聴いたら、うち数曲がカズオ・イシグロの作詞とあって、驚いた。ちょうど彼の小説、『私を離さないでNEVER LET ME GO)』を読んだ直後だったので。しかも原題と同名の曲も。

この曲、「Never Let Me Go」は、カズオ・イシグロの作詞ではない。今までも何人かのジャズシンガーが歌ってきたものらしい。著者が村上春樹に借りたジャズCDに、この曲があったため小説に使ったという逸話もある。ストーリーの中でも、重要な意味を持つ。聴くたびに、あの恐ろしくて悲しい場面が浮んでくる。体を揺らしながらこの曲を歌う少女...凄まじい運命が襲うのをすでに予期している彼女の背中...。実際に聴いてみると、物語の重苦しさを静かに浄化する優しい曲だ。ステイシーの淡々とした歌いっぷりが、よりいっそう心に響く。

小説、『私を離さないで』は、衝撃的な出会い。(この作品についての著者のインタビューをふまえて読めば尚更、テーマの普遍性が...) なんとも不思議なめぐり合わせの一枚。

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