2009年9月22日火曜日

映画「湖のほとりで」

イタリア映画、「湖のほとりで」を観てきた。ノルウェーのミステリー作家、カリン・フォッスム「 見知らぬ男の視線」が原作。北イタリアの村が舞台。殺人事件が解明されていく過程で、事件に関わる人々の人間模様が描かれている。

のどかで牧歌的な村の風景のせいか、人の心の様々な側面を親密に映していくせいか、ミステリーという感じがしない。不思議な印象のまま、物語は進行していく。



事件を追う警部は、人々に行動の意味を問う。だが本人たちは、衝動的な行動と感情を説明できない。「わからない」と悩み、言葉にならないもどかしさを抱える。そんな感情が絡み合って出来事をつくりあげ、進行させていく。指摘できる唯一の動機も、決定的なものではない。

複雑な親子、夫婦の関係について、人々は明確な言葉をもたない、「あなたにはわからないだろう」という。事件は解決しても、最後までわからないところはわからないままだという感覚が残る。

通底音のように悲しさが流れている。そのせいか、ある表情や行為にみえる愛情や優しさが際立つ。殺された少女の、彼を思う恋人の、警部とその娘の…。決してハッピーエンドといえないラストも、警部のささやかな言葉と、妻と娘の笑顔にほっとする。

しーんとした湖の風景、倒れる美しい少女の死体、そして幼い少女が家並みを歩く最初の場面…構図もおそらく完璧で、澄んだ空気が伝わるように美しい。丁寧に丁寧に作られていて、繊細で、何だかため息が出てしまった。

0 件のコメント:

コメントを投稿