2012年5月5日土曜日

恩師への感謝

先月、恩師である高瀬浄先生の訃報に接した。


98年当時、早稲田大学社会科学部の講義と「社会発展論」のゼミを担当されていた。大学3年めの私は、完全に生き方を見失い、さまよっていたのだけれど、「高瀬ゼミ」で先生に出会い導かれて、その後の方向性をみいだせた。情熱に溢れた講義、鋭い眼差しを思い出すと、訃報がいまだに信じられない。


大学院への進学も相談し、同大を去られた後も変わらずご指導をいただいた。フッサール、イリイチ、ウォーラーステイン、マルクス、西田幾多郎…折にふれ血肉にするよう勧められ、読んだ著作はみな、その時々の指針となり糧になった。


森を歩くこと、日本の地域をみること―秩父の村や山、高尾山、千葉の鴨川の千枚田、白神山地、沖家室島…様々な土地でのフィールドワークに同行させて頂いた。いつでも時間を惜しむかのように話し続けられた。地域の活性化、環境問題…から学の心構えまで。何時間にもわたる現場での講義から得たものはあまりに多く、今の私を作っている。


この十数年間、お会いしない間も、先生の存在と言葉を支えにやっきた。近年の私は、不本意な現状という自覚から、合わせる顔がない気がして、正直に言えば逃げていた。恩返しも何ひとつできず、感謝の気持ちすら伝えられなかった。無念と後悔ばかりが残る。


頂いた手紙や論文を読み返し、先生を思い出しては涙がでてくる。現在、取りかかっている課題も、いる神職として実践したかったことも、先生の教えが根底にあるので、報告することを目標にしてきた。きっと形にしなくては。それから、先生の著作を読み返し、世に伝えたかったことを少しでも多く受けとめ、担っていきたい。


今までと変わらず先生は心の中にいて。感謝の気持ちは伝わっていると、どこかで見ていてくださっていると信じたい。そして、私の人生に力を与えてくれた御縁に感謝して、これからもそんな御縁を大切にしなくてはと思う。

心からご冥福をお祈り申しあげます。


高瀬浄先生の著作一覧 (amazonの頁より)


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